研究内容のご紹介

高熱負荷半導体素子の冷却デバイスに関する研究

パソコンのCPUや車両のIGBTなどに使われている半導体素子は近年飛躍的に性能を向上させていますが,これとともに発熱密度も増加し,その熱制御が大きな課題となっています.省スペースで高い除熱性能を持つ冷却装置は,電子機器のコンパクト化や処理能力の高速化に不可欠です.本研究では,潜熱輸送を利用する相変化型冷却デバイスを対象に,作動流体に地球温暖化係数が極めて小さいフロンガスを,沸騰面には短パルスレーザを用いて作成した銅製超親水性伝熱面と用い,その性能向上に挑みます.

新規低GWP冷媒の表面張力の測定

地球温暖化は,極端な気象現象や海面上昇をもたらし,全世界で取り組まなくてはならない深刻な問題となっています.ところが,現在冷凍機やエアコンに使用されている冷媒(フロンガス)の温暖化係数は,CO2の2088倍ほどと非常に高いのです.本研究は,九州大学を筆頭に海外の研究チームと連携する新冷媒探求プロジェクトの一環です.表面張力は冷凍機などの性能を決定する重要な物性で,これを示差毛管法という手法で高精度に測定します.その測定データはREFPROP(NIST,USA)などに収録され世界中へ発信されます.

新規低GWP冷媒のら旋溝付管内凝縮・蒸発流伝熱特性

多くの冷凍機や大型空調機の熱交換器には写真のようなら旋溝つき管が使用されており,この流動伝熱特性は機器の性能や効率,そしてサイズを決定する設計因子として重要です.そのため,地球環境を鑑みた冷媒の選択のためには,この管内伝熱特性を把握する必要があります.本研究では,次世代冷媒の候補となる新冷媒,あるいは新規混合冷媒の,蒸発・凝縮伝熱特性を測定し,機器設計のために必要なデータベースの構築を行います.

新規低GWP冷媒の凝固点測定

産業界では食品加工,細胞凍結保存,LNG気化冷熱利用,電子部品プロセス制御などで-60℃以下の極低温条件を整える,あるいはその様な温度での流体輸送が要求される現場が増えてきました.したがって,そのような極低温冷凍機の需要も増えています.しかしながら,地球温暖化係数の低い新しい冷媒で極低温領域に適する物質の選択肢は少ないと予想されています.そのような状況下では,少ない候補から物質を混合して極低温冷凍機に適した物性を引き出す必要があります.本装置では,そのような混合物質の使用下限温度である凝固点を確認し,安全に極低温冷凍機が設計されるよう,データを提供します.

分子軌道-分子動力学計算による冷媒物性の予測

地球温暖化係数が低く なおかつ 大きな潜熱や蒸気密度を持つ冷媒(フロンガス)の探索は,今後ますます重要になります.これまでに多くの物質が候補に挙がっていますが,希少なサンプルを用いて行う熱物性測定が全て完了するまでには非常に時間とコストが掛かります.そこで本研究では,計算化学を駆使した冷媒の熱物性予測を行っています.量子化学計算(Quantum Chemistry Simulation)と分子動力学計算(Molecular Dynamics Simulation)を行い,分子の構造から電荷の偏りや最適な構造を予測し,さらに液体と蒸気が平衡状態にある系を予測,その結果から密度や表面張力などの値を算出する事ができます.これにより,加速的に冷媒探索のスピードを上げることを試みます.